「おばんざい」とは、京都の庶民が日常に食べているおかずのこと。その特徴は旬の食材や手ごろな食材を用いて、手間をかけずに作れること。本来の食材が持つ味をいかしたシンプルな味わいは薄めの味付けで、毎日食べても飽きることがない。中でも地のものや、旬の食材を用いたおばんざいは美味しい。
「おばんざい」は、京都の伝統的な家庭料理で、長い歴史を持つ一般的な惣菜のことです。この言葉の「番」は、通常の食事や質素な料理を指す言葉と関連しています。元々は京都以外でも使用され、庶民の食事における日常的なメニューを指す言葉でした。
京都のおばんざいは一般的には薄味で、鰹節、昆布、椎茸を使用した煮物が多いです。近郊で収穫された京野菜や根菜と油揚げを煮て、葛ひきにするのも一般的な調理法です。醤油は薄口が使われ、料理の色は素材そのものの色に近いことが多いですが、塩こぶと呼ばれる塩辛い料理もあります。
伝統的なおばんざいには新鮮な海産魚はあまり使われず、塩魚や干物、琵琶湖や近くの川や池で獲れる淡水魚が主に使用されていました。しかし、近年はヘルシーなイメージから、おばんざいは人気を集め、惣菜店や飲食店で提供されています。京都の小料理店では、おばんざいと明示せずとも、伝統的なおばんざいのような料理が提供されていることが多いです。
野菜
昭和前期において、京都近郊は広大な農地に恵まれ、この地域で生産された京野菜が市内で広く消費されていました。鉄道で運ばれてくる遠隔地からの野菜は、一般的に「レールもの」として区別されました。
主な京野菜には壬生菜、水菜、九条葱、ナス(賀茂なす、山科なす)、鷹ヶ峰唐辛子、万願寺とうがらし、カボチャ(鹿ヶ谷かぼちゃ)、ダイコン(聖護院大根、大根の葉)、カブ(聖護院かぶ)、ニンジン(金時にんじん)、ゴボウ(堀川ごんぼ)、エビイモなどが含まれます。その他にもアブラナ(菜の花)、ハクサイ、キュウリ、白ウリ、タケノコ、サトイモ(子芋、ずいき)、ワラビ、フキ、ウド、サンショウ、ジュンサイ、シイタケなどが挙げられます。
豆類と海藻類
大豆(枝豆)、小豆、ソラマメ、エンドウマメ(青豆)、インゲンマメ(三度豆、金時隠元)、ゴマ、クリ、コンブ、ワカメ、アラメ、ヒジキ、蒟蒻、豆腐、ひりゅうず(がんもどき)、おから、油揚げ(お揚げさん)、納豆などが一般的に使用されました。
魚介類
魚介類は一般的に贅沢品で、頻繁には使用されませんでした。夏にはハモや節分にはいわし、正月には芋棒の棒だらなど、季節によって限定的に使用されました。
アユ、フナ、諸子(現在は高価のため一般的な家庭料理には含まれていません)、瀬田シジミ、鯉、サバ(塩鯖、浜焼き鯖)、塩鮭、カツオ(生節)、ハモ、棒鱈、身欠き鰊、ヤナギムシガレイ(笹かれい)、アマダイ(ぐじ)、マイワシ(目刺し)、煮干し(出汁じゃこ、カタクチイワシ)、ちりめんじゃこ、えび豆、スジエビ、ワカサギなどが挙げられます。